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IASB UPDATEから 連載第1回

【IFRSコンソーシアム事務局】

2010年1月18日-20日にロンドンで開催されたIASBとFASBの合同会議及び、1月20日-22日に同じくロンドンで開催されたIASB会議の内容を、IASB発行のIASB Update (January 2010)をベースに要約したものです。

IASB/FASB合同会議(2010年1月18日-20日)

議題

1. 金融危機対応

  1) 連結

  2) 公正価値測定

  3) 金融商品 : 分類及び測定

  4) 金融商品 : ヘッジ会計

  5) 資本の特徴を有する金融商品

2. 財務諸表の表示

3. 保険契約

4. リース

5. 収益認識

1.金融危機対応

1) 連結

連結範囲の決定規準として検討している支配モデル(control model)に関して議論された。
論点は以下の通り。各論点の詳細は割愛する。

■ 議決権を通じた支配(過半数の議決権を有しない場合の支配を含む)

■ オプション及び転換金融商品

■ 代理人関係(排除権(kick-out rights)を含む)

2) 公正価値評価

議論された論点は以下の通り。各論点の詳細は割愛する。

■ 公正価値の定義

■ 市場が以前よりも活発でなくなった場合の公正価値の測定

■ 当初認識時の公正価値

■ 当初の損益(day 1 gains or losses)の認識

■ 公正価値による負債の測定

■ 不履行リスク

■ 負債の移転時における制限事項

■ 企業自身の持分金融商品の公正価値による測定

■ 市場参加者の視点

■ 参照市場(reference market)

3) 金融商品 : 分類及び測定

金融負債の分類及び測定に関するこれまでの議論の内容を確認するにとどめられ、決議事項はなかった。

4) 金融商品 : ヘッジ会計

ヘッジ会計の改訂プロジェクトが完了するまでのプロセスにおける節目と、各節目において扱うべき論点について議論されたが、ヘッジ会計については包括的な見直しに向けて取り組むことで、暫定的な合意があった。ただし、FASBが金融商品についての包括的な公開草案の公表を2010年3月に予定していること、及びIASBがIAS第39号をIFRS第9号として全面的改訂するプロジェクトの残りの部分についての公開草案の公表を2010年第1四半期に予定していることを踏まえ、両審議会は、ヘッジ会計でまず優先すべき論点を、(1)金融商品であるヘッジ対象、並びに(2)金融商品の分類及び測定モデルについての現時点における両審議会による決定事項に直接関連のある論点、とした。

上記の論点について検討した後に検討すべき論点としては、(1)非金融商品であるヘッジ対象に係るヘッジ会計、及び(2)ポートフォリオのヘッジ会計がある。両審議会はヘッジ会計に関する全ての論点について2010年上半期中に取り組む意向を持っている。

5) 資本の特徴を有する金融商品

両審議会は、これまで検討してきたアプローチのいずれも採用しないことを決定した。またこれに代わり、IASBスタッフに対しIAS第32号「金融商品: 表示」の改訂という形で対処することが可能かどうかについて検討するよう指示した。

2.財務諸表の表示

両審議会は、討議資料「財務諸表の表示に関する予備的見解」において提案した事項に関する審議を継続し、特に包括利益計算書における損益の機能別、及び性質別分解表示、及びセグメント情報の開示について検討した。

これまでの経緯

討議資料では、包括利益計算書の各表示カテゴリーにおいて、報告企業は損益項目を機能別に分解することが提案されている。さらに各機能は、企業の将来のキャッシュフローの予測にあたって包括利益計算書の有用性を向上させる限りにおいて、性質別に分解することが要求されている。こうした性質別の区分を包括利益計算書の本体に表示させることが実務上不可能である場合、注記開示でも可とする。

討議資料では、また機能別に分解された情報を表示しても目的適合性のある情報を提供することにはならないと経営者が考えた場合、報告企業は包括利益計算書の項目を各表示カテゴリーにおいて性質別に分解することも認められる。

2009年10月、両審議会は、報告企業は損益項目を性質別及び機能別に分解するという討議資料で行った提案を維持することを暫定的に決定した。さらに、単一の報告セグメントしか持たない企業は、包括利益計算書上で分解情報を表示し、複数の報告セグメントを持つ企業は、セグメント注記の中で分解情報を表示することになっている。

暫定的決定事項

両審議会は、今後発表される公開草案に盛り込むべき内容に関して、以下の暫定的決定を行った。

■ 単一の報告セグメントしか持たない企業は、性質別に分解した情報を、包括利益計算書の本体ではなく、単一の注記項目として開示してもよいこと。また、注記において性質別の情報開示を行う企業は、同じ注記項目中に機能別の情報も含めなければならないこと。

■ 複数の報告セグメントを持つ企業は、分解された性質別の情報を、セグメント注記において開示しなければならず、また同じ注記項目中に機能別の情報も含めなければならないこと。

■ 損益項目を機能別及び性質別に分解し、注記で開示する企業は、機能別の情報を包括利益計算書の本体で表示する必要があること

■ 「企業の将来のキャッシュフローの金額、時期及び確実性を評価するにあたって有用な情報を表示すべく、損益項目を分解する必要がある」という討議資料における提案内容を維持すること。したがって、機能別の分解が、包括利益計算書の提供する情報の目的上、有用性を向上させない場合には、企業は損益項目を機能別ではなく性質別に分解する必要があること

両審議会は、US GAAP ASC 280「ゼグメント報告」及びIFRS第8号「事業セグメント」に対する改訂も同時に検討し、今後発表される公開草案に盛り込むべき内容に関して、以下の暫定的決定を行った。

■ セグメント注記において性質別の損益情報を開示する企業は、包括利益計算書とセグメント注記における損益項目の分類方法に対して一貫性を維持すること

■ 事業セグメントの活動のうち、企業全体の活動についての情報とは切り離して報告セグメントとして表示すべき規準を満たさない報告セグメントの活動についての情報を開示しなければならないこと

■ 報告セグメントの営業損益と連結包括利益計算書上の営業損益との差異調整表の作成を義務づけること

3.保険契約

保険契約については、1) 測定及びリスク調整、2) 初日の損失(day-one losses)、3)残余マージンの扱い及び4) 保険契約者の行動について討議されたが、詳細は割愛する。

4. リース

以下の論点が審議された。

1) 償却原価ベースのアプローチの下で、オプション及び偶発リース料を伴うリースの当初認識後の測定をどのように行うか

2) 短期リースに対して適用緩和措置を設けるか否か

3) 貸手が保有する投資不動産の会計処理

1) 償却原価アプローチの下でのオプション及び偶発リース料を伴うリースの当初認識後の測定

両審議会は、以下を暫定的に決定した。

■ 予想されるリース期間に当初認識以後の変更があっても、借手の割引率は変更しない。

■ リース料が変動参照金利に応じて決まる場合を除き、偶発リース料のもとでの要支払額に当初認識以後の変更があっても、借手の割引率は変更しない。

■ 予想されるリース期間に当初認識以後の変更があっても、貸手が使用する割引率は変更しない。

■ リース料が変動参照金利に応じて決まる場合を除き、偶発リース料のもとでの要支払額に当初認識以後の変更があっても、貸手の割引率は変更しない。

2) 短期リースに関する適用緩和措置

両審議会は、以下を暫定的に決定した。

■ 借手には、簡素化された短期リースの会計処理方法を容認する。

■ 上記の簡素化された会計処理方法において、借手は支払リース料総額とこれに応じた短期リース契約の下での使用権資産を、財政状態計算書上で認識する。

■ 貸手には、短期リースの会計処理に関して適用緩和措置を選択できるようにする。

■ 短期リースを、「可能性として考えられる最長のリース期間が12ヶ月未満であるリース」と定義する。

3) 投資不動産

両審議会は、貸手が保有する投資不動産を原価で測定する場合には、新たな会計処理要件が加わることを暫定的に決定した。

IASBは、投資不動産の貸手が、その保有不動産をIAS第40号「投資不動産」に従い公正価値で測定する場合、上記で新たに追加される会計処理は適用されないことを暫定的に決定した。

5.収益認識

両審議会は、提案中の収益認識モデルに対する開示要件を検討し、以下の通り暫定決定した。

■ FASB ASC605-25-50 「複数要素取引 – 開示」及びIFRS第7号「金融商品: 開示」における目的と同じような概略的(high-level)な開示目的を設定する。

■ 企業には、以下の開示を要求する。
a) 顧客と締結している契約の基本的内容、及びこれに関連する会計方針
b) 顧客との契約に対する会計処理にあたって、主に適用された判断
c) 正味契約ポジションの期首、及び期末残高の差異調整表
d) 未履行の履行義務の総額、及びそれらを充足する予定時期
e) 不利な契約についての情報(不利な契約の程度と金額、及び不利な契約の当事者となった理由)

両審議会は引き続き開示について討議を重ねるとともに、今後の会議においては範囲と移行措置について検討する予定である。

 

IASB会議(2010年1月20日-22日)

議題

1.金融危機対応

  1) 認識の中止

  2) 金融商品 : ヘッジ会計

2.IFRS第1号の改訂

3.廃止事業

4.財務諸表の表示

5.退職後給付

1.金融危機対応

1) 認識の中止

審議会は、IAS第32号「金融商品: 表示」における金融資産と金融負債の相殺に関する要求事項について議論した。審議会はこの会議でいかなる決定を行わず、今後の会議で引き続き議論することとした。

2) 金融商品 : ヘッジ会計

審議会は、ヘッジ会計の目的として考えられる2つの案について議論した。これらの目的案は、リスク部分が、審議会の提案するヘッジ会計アプローチの下でヘッジ会計を行うのに適格か否かという文脈において考えられる案である。審議会はヘッジ会計の目的は、リスク部分が、ヘッジの非有効性を判定する目的上、個別に識別可能かつ測定可能である場合に、リスク部分に対するヘッジ会計が容認または強制される点に注意を促している。審議会はまた、ヘッジ会計の目的及びリスク部分の扱いは、ヘッジ対象が金融商品である場合と非金融商品である場合の両方に適用される点についても注意を促している。

2.IFRS第1号の改訂

本件についての詳細説明は割愛する。

3.廃止事業

審議会は、本件に関する公開草案(IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び廃止事業」を改訂する提案の再公開草案)のコメント募集期間を60日とすることを決定した。

4.財務諸表の表示

審議会は、討議資料「財務諸表の表示に関する予備的見解」において提案した事項に関する審議を継続し、特に以下の論点について検討した。詳細は割愛する。

■ セグメント情報の開示

■ 金融機関への適用

■ コスト対効果の問題

■ 正味有利子負債の注記開示

5.退職後給付

今後予定されている退職後給付についての公開草案に含まれる予定の開示要件について議論し、開示内容の簡素化を検討するようスタッフに指示した。また解雇給付についての議論も行われた。

第2回に続く

※本連載記事につきましては、第2回以降、会員限定とさせていただきます。

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